研究スタイルの違い

2003年春に、私は、フランス・ストラスブール大学(ルイ・パスツール大学)の客員教授として招待され、世界遺産の街に短期滞在したことがある。フランス北東部のライン川左岸に位置するストラスブールは、大聖堂と水路に象徴される美しい歴史都市であると同時に、欧州(EU)議会の本会議場を有するEUの中心都市としても有名である。

大学の名前にも冠されているルイ・パスツール(1822-1895)は、酒石酸結晶の光学分割で学位を得た後、ストラスブール大学(ルイ・パスツール大学)に教授として職を得た。ルイ・パスツールは、化学者として研究の道に入ったが、その後は、ワインやビールを腐敗から守る低温殺菌法(パスツリゼーション)の開発や、狂犬病ワクチンの開発で歴史に燦然と輝く科学者である。

私は、ストラスブールに滞在している時、100年以上前にパスツールはここでどんな研究生活を送っていたのだろうかと思いを馳せることがあった。

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門前の小僧

個人的な昔話で恐縮ですが、私と放線菌との馴れ初めについて書かせていただきます。論文にも学会発表にもならなかった研究ですが、孤軍奮闘していた頃が懐かしいので。

今から30年以上前、私は東大農芸化学科の別府研で、大学院生として「コリシンE2の作用機作」の研究をしていました。当時の別府研では、凝乳酵素キモシンのクローニングと並んで、放線菌A-factorの再発見が契機となって放線菌研究が中心課題の一つになっていました。研究室セミナー(研究報告会・論文紹介)でも、放線菌関連の研究を頻繁に聞いていましたが、私自身は、別府研在籍中(1977-1983)は放線菌とは無縁でした。

私が放線菌を研究対象とするようになったのは、

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サムライ化学者・高峰譲吉に学べ

先日、米国サンフランシスコで開催された工業微生物学会(Society for Industrial Microbiology)に参加しました。この学会の主題は、“微生物のバイオテクノロジー”であり、発酵産業に関連する微生物、微生物が生産する応用酵素、生理活性物質の研究などが含まれます。私は、微生物二次代謝産物の生合成研究に関するシンポジウムで話すことになっていました。いつもの通り、海外へ向かう機内では、PCでスライドを眺めながら発表内容の最終チェックです。参加する学会の趣旨に合わせたイントロがうまくできれば、後の流れはスムースになります。今回の学会の主題であるバイオテクノロジーと発表予定のケミカルバイオロジーの接点をどう説明しようか?と思案しました。

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酒とカルベン、どちらが結合に効果的?

長田裕之
主任研究員
長田裕之(D.Agr.)
1978年東京大学農学部農
芸化学科卒業1983年同大
学院農学系研究科博士課
程修了。同年理化学研究
所研究員。 1992年主任研究
員(抗生物質研究室)。
2008年より現職。現在、
埼玉大学、東京医科歯科
大学などの客員教授を兼
任。2009年日本農芸化学
会賞受賞

=ケミカルバイオロジーの技術革新:化合物アレイ=

私の趣味は「飲酒談笑」である。酒を飲みながら楽しく語り合えば、たいていの人と仲良くなれる。国内ではもとよりろくに言葉も通じない外国でも、「バールでグラッパ」を、あるいは「パブでエール」を飲んでいると、グラスの数が増すごとに隣で飲んでいるオジサンとも仲良しになれる。(見知らぬ女性に声を掛けるのは、避けたほうが無難であるが・・・)酒には、人の心をつなぐ効果があるらしい。

おっと、酒の話だけでは、本誌の編集者からお叱りを受けそうだ。「私の自慢」なら酒の話にしようと思って執筆を引き受けたのだが、研究の自慢を書かなくてはならないと知り困ってしまった。ちょっとコジツケに近いが、私の趣味である「飲酒談笑」が、私の自慢にどう繋がっているかを語ることにしよう。

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武士はバンドワゴンに乗らない

人生において二者択一を迫られた時に、私は、いつも葉隠の一節を思い出す。「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり。二つ二つの場にて、早く死ぬはうに片付くばかりなり」である。葉隠では、重大なことは常々よく考えておき、選択を迫られたときには毅然たる態度で決断しなければならないと教えている。しかも、人生における二者択一は、どちらが正解か分からないことが多いので、損得で考えても無駄である。であるから、一見、損な方(生死の二者択一なら死の方)を選んでおけば後悔することもないであろうとも解釈できる。

研究者は、卒論として所属する研究室選びに始まって、独立してからの研究テーマの設定など、様々な局面で「選択」(実際には、二者択一ではなく複数選択肢から一つを選ぶ場合が多いが)しなければならない。私も、運命のいたずらと様々な選択を経て、無限の可能性の中から「唯一の現在」に至っている。

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